先日、営業研修を実施するためにお客さま先にお伺いしました。
参加者は、各営業拠点の責任者のみなさまです。
企業研修を実施する多くの場合、参加者を除くと人事部や
人材開発部などの担当部署の方と講師である私だけですが、
この時は先方の経営者、役員の方が勢ぞろいしていました。
そして、研修が始まる際に経営者の方が語り掛けたのです。
「みなさん、日頃の業務お疲れさまです。
正直に言うと、私は頭がよくありません。
みんなが喜んでくれるいい会社をつくるために実行計画を、
ずっと考えていました。ところが、お恥ずかしい話ですが、
いいアイデアが浮かばずに困っていました。
みなさんには、忙しい中ですが、ぜひ力を貸して欲しくて集まって
もらいました。会社の未来のため、いい会社にするためにみなさんの
知恵が必要です。今回の研修は、会社の未来を決める大切な研修です。
どうか一緒に明るい未来を作っていきましょう。
私も一緒に参加します。どうぞ宜しくお願いします。」
短い挨拶でしたが、しっかりと社員の一人一人を見つめて
語り掛けていました。見栄やプライドを捨てて、いい会社にしたい、
そのために力を貸してほしいとう想いの伝わる挨拶でした。
社員の方も、真剣な眼差しでその挨拶を聴かれていたのが印象的です。
謙虚で飾らないその想いが社員に伝わったのでしょう。
半年後の研修の成果は参加されたすべての部署で、
前年対比110%〜130%となり、過去最高益を記録した部署もありました。
のだと思います。
経営者の想いが、社員の本気のスイッチを入れた
のだと思います。
■なぜ、ストーリーなのか?
これまでたくさんの会社で営業コンサルティングを実施してきました。
しかし、フレームワークを埋める宿題を出しても、提出期限ぎりぎりに
なんとか出てきて、よかったと思って安心しながら中身を見ると、
議論の跡が見えない、とりあえず埋めましたといった内容の場合もあります。
「なぜ、自分の会社のことなのにちゃんとやってくれないんだろう・・・」
たくさんの失敗から学んだことは、どんなに優れた
戦略やフレームもそこに「想い」がのっていなければ人は動かない。
意味が無い。ただの枠組みでしか無いということでした。
多くの心理学者が学説を唱えていますが、
人は理屈ではなく感情で動くからです。
では、その動きたくなる感情はどのように取り入れたらいいのか?
たとえば、私たちはできないことの言い訳に、
「頭では理解しているんだけどできないんだよね」という言葉を
聴くことがあります。
たしかに、なぜ必要なのかは分かっているのです。
でも、行動しない。
タバコは身体に悪い、運動したほうがいい。
ダイエットしたほうがいい。英語は将来役に立つ。
分かっているけど、出来ていないことってありませんか?
人は、頭で理解しただけでは、行動が起こせないのです。
そこで、必要になるのが感情です。
人は、共感や感動といった気持ちの高ぶりや
揺れがあってはじめて行動を起こします。
ですから、人に動いてもらうには、フレームワークといった
ツールだけを提供するのではなく、感情を動かすしくみが必要なのです。
そして、
感情を込めるために必要なのが、物語です。
しくみに感情をのせるために物語が非常に効果的です。
しくみの土台に物語があることで、しくみを実行する時に気持ちが入り、
人にやってもらうときも自分の言葉で説得力のある話ができます。
物語でしくみに命を吹き込む必要があったのです。
物語の背後にある想いや息づかいを併せて伝えることで、
初めて人は心を動かされて、共感し行動します。
物語は、人を動かす力があります。
ぜひ、あなたも周囲の人に、あなたの使命、
こだわりを物語にして、伝えてくださいね!
最後までお付き合いいただきありがとうございます。