小売店でのコンサルティングをする際に、
まずお店を見に行きますが、一番最初に見るものがあります。
それは、商品でも陳列でもありません。
繁盛する店とそうでない店の違いは、
商品の魅力でも珍しい陳列方法ではないからです。
繁盛するお店づくりでもっとも大切なことは、
働いているスタッフさんの「声と笑顔」です。
お客さまは、お店に楽しい気分を求めて足を運んでいます。
それなのに、スタッフさんが暗い顔して、ボソボソしゃべっている店など、
頼まれても行きたくないのです。
繁盛するお店のスタッフさんは、みんな楽しそうで、
元気がよくて、明るい笑顔があります。
なにより、笑顔でアイコンタクトをしたりと、
スタッフ同士のコミュニケーションが自然で仲の良さが伝わってきます。
これらを感覚的なものではなく実際に実験をした方がいます。
ドイツにあるヴェルツブルグ大学の心理学者、ローランド・ノイマンは、
「声のトーン」が人に与える影響について次のような実験を行いました。
実験に参加するのは、男女15名ずつの計30名。
ノイマンは彼らに3種類のテープを聞かせました。
どのテープも同じ哲学書の朗読で、朗読者も同じ人物です。
ただ、それぞれ「楽しそうな声」「感情を出さないニュートラルな声」
「悲しそうな声」で朗読してもらったそうです。
その結果、朗読を聞いた後にもっとも気分がよくなるのは、
「楽しそうな声」によるテープでした。
さらに、朗読者に対する好感度について聞いてみたところ、
「楽しそうな声」は「悲しそうな声」の倍以上の支持を集めた。
楽しそうな声を聴くと、こちらまで楽しくなってくる。
楽しそうな人を見ていると、こちらまで楽しい気分になってくる。
ノイマンはこうした心理のことを「ムード感染効果」と呼びました。
その人の雰囲気(ムード)は、相手に「感染」するというのです。
私たちの周囲を見渡してもそうではないでしょうか?
いつも明るく朗らかな人には、やはり人が集まります。
いつも不平不満ばかり言っている人の周りには、
だんだん人が遠ざかっていきます。
お店でいえば、お客さまは「楽しい気分」を求めて足を運びます。
そして、
お客さまの楽しい気分をつくるカギは、
私たちの声であり、元気であり、笑顔なのです。
この基本原則を知らない人ほど、繁盛しない理由を
「お店が古いせいだ」「店が狭いからだ」「立地が悪い」と
自分のせいにしないで環境のせいにします。
問題は、私たち自身の声と元気と笑顔なのです。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
実験データの部分は下記の書籍を参照しました。
『「もう一度来たい」と思わせる心理術』
(内藤誼人著/KKベストセラーズ)