愚痴を言うヒマ

愚痴を言うヒマ

私が旅行会社で働いていた新入社員の頃の話です。

入社してしばらくは売上が伸びず苦しい日々もありましたが、
だんだん営業成績が伸びてくると、今度は忙しくて忙しくて、
自分が満足できる水準のサービスを提供できないという
ジレンマに陥ることがありました。

たとえばお客さまに旅行先の地図や観光名所のパンフレットを
揃えて届けたり、お客さまの好みに合わせた昼食場所の案内、
旅館やホテルの部屋にフルーツ盛り合わせなどの差し入れをする。

といったサービスをお客さまに色々としてあげたいのに
時間が無くてやれない、喜んでもらえるのが分かっているのに、
する余裕がないというのは接客サービス業に携わる人間としては、
相当に辛いことでした。

そんな悩みを抱えている時、同期の中に、営業成績がよくて
お客様からの評判もいいT君ともよく話をしていました

T君は私と同じような営業スタイルで、
お客さまの懐に飛び込んでいってかわいがられるタイプ。そして、
どれだけ喜んでもらうかを信条としている営業パーソンでした。

T君とは、いつも情報交換をしていました。
お互いに読み終えたビジネス書の感想、うまくいった営業方法、
おすすめの観光地や旅館などなど多岐にわたりました。

ある時、T君と居酒屋で飲んでいた時、近くで飲んでいた
サラリーマンが愚痴を言いながら、管(くだ)を巻いていました。

今となっては恥ずかしいのですが、正直、その頃の私は
会社への不平不満、上司への愚痴が多かったのです。
そのため、近くのサラリーマンを見ながら
「ああ、自分と同じだな」と思っていました。

その時、一緒にサラリーマンの愚痴を聴いていた
T君は私に向かって、ごく自然に、そして少し楽しげな
表情さえ浮かべて言いました。

「最近、愚痴を言うヒマもないな〜」

相当に忙しく不平不満だって、たくさんあるであろう
T君が漏らしたその言葉に私はふと我に返りました。

ふとした言葉の中から、

「忙しいのはみんな一緒。
 その中で、工夫して努力しているんだ」

そう教えられたのです。

そして、忙しいと言いながら、愚痴を言っていた
自分が強烈に恥ずかしくなりました。

時として、不平不満や愚痴を言う事も大切な時もあります
このT君の小さなひと言は私にとって大きな転機となりました。
それ以来、愚痴を言わなくなりました。

誰かのひと言って、人生や価値観すら
変えてしまう

ほどの影響力を持ちますね。
今度T君に会ったら、改めてお礼を言おうかな。

さて、あなたの人生を変えたひと言は何ですか?

ぜひ、教えてくださいね。

最後までお付き合いいただきありがとうございます。